No Sweetness

この記事は一年以上前の記事です。

きっとこの棘もいずれ消える
君がその棘の話を思い出さなくなるのと同じように
瞬きをする時 目を開くのを少し遅らせる癖が僕を拒んでいるように見えたから
僕は違う道を選んだんだ

この星が丸いって事を知るのに数年かかったけれど
脇道にそれる事はこの先無いと確信できる
二人の汗を吸い込んだシーツは僕には冷た過ぎた
幾つもの命は僕には届かず 君の不安が僕の心を突き刺す

誰かを欲する自分なんて想像できなかったんだ ホントだよ?
その冷たい指先を温める事もできないかもしれないけれど
仰け反った体を持ち上げて首筋に噛みつくくらいには その体温が大好きなんだ
苦し紛れに本音を隠しても 君は僕の真意をオウム返しするんだ

君の心の錨になれるなんて思っていないけれど
お祭りのピエロは思いの外得意なんだぜ
寄り添った熱の代わりの空白は僕には寒過ぎた
届かない声を出しては 横に君の幻影を作ってみたりする

誰かに嫉妬する自分なんて燃やし尽くしたと思ってたんだ ホントだよ?
その火照る躰の息の根を止めるなんてしたくないけれど
振りほどく腕の迷いをベッドに押し付けて唇で溶かすくらいには その手触りが大好きなんだ
乾いた舌の行く先を探しても 君以外に思いつかないんだ

手を取って湖のほとりを歩いたり 今夜何を食べるのかで揉めたりしてみたいな
明日は雨だって君からのLINEで洗濯物を取り込んだりしてみたい
君と一緒ならその全部が愛おしく思える

この話もいずれ終わる
香りも味もこの世界丸ごと綺麗に終わってくれる
瞬きをしてもまだ君がそこに居ると信じられる事を何よりも大切に思うから
僕はこの本の栞を捨てたんだ

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