ひだまりと川

この記事は一年以上前の記事です。

目を覚ますと 「昨日何時に寝たっけ」一瞬考えてスマホに手を伸ばす
ぼんやりニュースを眺めていたら 「にゃぉおー」ネコが朝ごはんの催促
いつの間にか重くなった体を起こして 餌を入れに台所へ向かう
ついでにグラスに水を入れて部屋に戻り パソコンの画面をつける

何が変わったわけでもないけれど 日付だけは確実に昨日とは違う
あの人は今日どんな気分で目を覚ましたのかな そんな事を考えながら仕事を始める いつも
今日は少しだけ違う朝で 何が違うのか分からないけれど なんだか少し優しい朝

何処かで何人が死んでどれだけお金が動いたか そんなニュースばかり 麻痺した鼓動
空っぽの手のひら強く握りしめると脈拍を感じて ちょっと気持ちが悪くなって手を開く

娘を呼んで 「川に行こうか?」あふれる笑顔を見て 一緒に着替える
水筒にお茶と氷を入れたけど ひっくり返したら何故かこぼれる ゴム栓どこにあるんだろう
ビールと水筒をビニール袋に入れて サンダル履いて手を繋いで歩く
目に映るもの映らないもの 色んな話をしてコロコロ顔が変わる君

昨日と代わり映えのしない僕と いつも違う顔の君
あの人はこの太陽を見る事を忘れていないかな そんな事を考えながら川に着いた
雨の後で濁っていたけれど 日の光を照らしてきらきら光って 心地よい音が流れてる

誰かが誰かを愛した事を批判され 誰かを殺した人が称賛される そんなニュースばかり この星はそんな事を知らない
サンダルを脱いで川に足をつけてみる 裸足で石の上に立つと「ただいま」って言いたくなって ちょっと泣きそうになった

蝶々を追いかけて走る娘が居る
「ここはいいところねぇ」なんて言いながら歩くおばさんに挨拶をする
無言で下を向いて歩き去るおじさんを見送る
先日の雨でまだ少し濡れた土と生い茂る草の匂いを嗅いだ
僕の揺れる心だけを置き去りに川は流れ続ける

手を繋ぐのが下手なあの人 僕の小指だけを掴む君
どんな事だって「一つ」なんて無いけれど それでも「ひとつ」だったりする
どっちかなんてどうでも良くて どっちも愛おしい今とかだったりする

電気を消して布団にもぐりこむと ネコが手と顔を舐めたりしながら布団に入ってくる
布団に入れてやると 「にゃにゃ」って言いながら布団から出ていこうとする
少し無理やり抱きしめて 横腹に顔を埋めてみる
気がつくといつも視界に居るね ありがとう

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