Poetry | 邂逅のビジョン
この記事は一年以上前の記事です。
白と白の交わる世界
やがて黄昏れた紅月は こびりついた土埃と共に朝を貪った
船賃が無くなるまで 君が君を喰い散らかして
指先のフィラメントを 零し続ける 零し続ける
君は終わらない悪夢を現実だと思い 途切れ途切れの現実を妄想だと思ってた
この星は広すぎて 届かない声に途方に暮れて 花を一本手折りながら呟いた
「これで終わりにしよう」
いつしか世界は声を忘れ 騒音で満ち溢れた
シナリオは迷うことなく 扉を一つ増やした
何も聴こえなくなった世界で やがて君は届ける声を忘れた
僕は一枚の折り紙を駄菓子屋で買ったんだ
それを封筒に入れて君に送った
君は宛名の無い封筒を開け 折り紙をしばらく見つめた
昔折っていた紙飛行機を折ってみた
あまり上手く飛ばないので もう一度折り直した
また上手く飛ばないので しばらく悩んだ君は
「あと一回」と呟いて もう一度折り直した
今度は綺麗に飛んだ
窓から飛ばした紙飛行機が見えなくなるまで飛んでいった時
君は気づいた 正確には 思い出した 同時に 覚えた
「もう一回」君は呟いて 声を上げた
もう一回 もう一回 君はそう言い続け 声を上げ続けた
世界はやがて 声を思い出し 声を覚え 静寂で満ちていった
僕はある朝 郵便受けを開けると
沢山折り紙が入った封筒が届いていた
これからだよ これからだ
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